残置物の始末

賃借人から退去の申し入れがなされ退去立会期日を設けていたところ、退去立会期日までの間に賃借人が退去してしまい、連絡が取れなくなってしまうことがあります。居室に何も荷物が残っていなければよいのですが、荷物が残っている場合は注意が必要です。この荷物を残置物と言います。

　退去した部屋に残された荷物は、賃借人が所有権を放棄していない限り、退去した賃借人の所有物です。荷物の置き場所を移動することは可能ですが、勝手に不要なものだとか、ゴミなどと判断して処分することはできません。

　もっとも、残された荷物の中には、布団類や安い家具など、明らかに賃貸人に処分を任せて置いて行ったものであろうことが推定できるものもあるでしょう。法律上は、判決を得て、荷物を差し押さえて競売するという手続きを取れば処分することができますが、本人に連絡が取れない場合には、判決を取るのに公示送達手続きを取らざるを得ず、そうすれば大変な時間を手間が掛かります。また、価値がないものに、わざわざ倉庫代を掛けて保管し続けるのかも悩ましいところです。

　このような場合、実務上は、まず部屋に残されたものが何かを記録し、価値評価も含めて目録を作ります。賃借人が滞納で出て行ったような場合は、仮に処分しても高価でないもの、代替がきくものはその代金相当分を未払賃料と相殺することを検討します。なお、貴金属類はもちろん、パソコンや書類には、第三者には分からない価値がある場合があるので、可能な限り保管するよう心掛けてください。最終的に処分せざるを得ない場合でも、評価の証拠が残るように写真などを取っておくこと、場合によれば賠償に応じる用意をしておくことが必要です。